「机の上で、20キロ、30キロと、避難指示の円を地図に描いて拡大してみた。線上に家、学校、商店、田畑、谷川、森林、神社……などが理不尽な風景としてたち現れてきて、そこで起きている異常を思った。当事者の理不尽を共有できるような表現を目指さなくてはならないのだ……美しい山里の風景を撮っていたはずが、突然、汚染物の山が立ちはだかるという事態を記録しなければならなくなった。……未来に向かってレンズを向けているような感覚に襲われもした。眼前の風景が十年後、二十年後、どのようになっているのだろうか?」
(土田ヒロミ「フクシマの風景を撮る」)
2018年にみすず書房から発表された広島の写真で知られる写真家土田ヒロミの大判写真集。
2011年から120回にわたり福島へ向かい撮影した。
撮影した5万点から190点を精選。
同じ地点を数年後に訪ね定点撮影。見開きページで比較されている。
かつてあったものがなくなり、そこにはなかったものが積み上げられている。
街に山に川に海に起こった大きな出来事が静かに横たわっている。
地図、写真解説、撮影区域、撮影機器、など詳細なデータを記載
解説:木下直之・東京大学大学院教授・芸術資源論
著者:土田ヒロミ 出版社:みすず書房 2018初版 ハードカバー
C(本文美品/見開き日付メモ/カバー下部シワ)