静かに小窓をひらくと
なまぬるい花びらの匂いがながれて
心を薔薇色のうすぎぬでつつむ
ゆめにしたっているここちで
おぼろ霞んだ外観をみていると
いずくからともなく
追憶がゆうれいのようにやってくる
その気だるいやるせなさ
(窓)
稲垣足穂と共に近田春夫に師事。
幻想的かつ抒情性のある作品で高く評価されたモダニズム詩人・作家衣巻省三(きぬまきしょうぞう)の作品集。
作品は全て長い間稀覯本となっており容易に読むことが出来なかったがこの度山本善行(善行堂)さんの手によって約90年ぶりに編纂された。
萩原朔太郎から左川ちか、北園克衛に連なる作家です。
櫻井久さんによる素晴らしい装幀にもご注目ください。
【目次】
詩
「こわれた街」
「足風琴」
小説
「プリマドンナ」
「ポオの館」
「雨の街」
「落ちたスプウン」
「どこの町」
「キッドの靴」
「陋巷」
「街のスタイル」
「歪められた景色」
撰者あとがき
著者 Author:衣巻省三 出版社:国書刊行会 2024 初版ソフトカバー/函 432p
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