『戦争のため、工場を閉鎖せざるをえなくなり、家族を残して行方不明となった父は流転先の土地でふたたびロクロを回す。
その父亡きあとも、こけしの存在が離れ離れに暮していた家族の関係にゆっくりと血を通わせてゆく、実在する家族をモデルに書かれた、こけしにまつわる連作三篇。』
七月堂さんが復刊されたこの短編がずっと気になっていました。
文庫版を少し大きくしたこの小さな本を取って読んでみると戦中・戦後の北の土地に住む家族の冬の風景が立ちどころに目の前に現れて、時代の流れと国家に翻弄されていく父とそれを追う著者の心の動きを同時代を生きるように目で追いました。
他二編も収録した忘れられていた秀作短編集です。是非。
最初の発表は1978年。
著者:佐藤光良 発行:七月堂 2018 ソフトカバー 201P
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