"故郷を失うことは、自分を失うことなのだろうか。"
中国福建省山間部に住む客家(はっか)と呼ばれるひとたちとその住居を撮影した、中村治の1st写真集。
客家の人々は客家土楼と呼ばれる世界遺産にも登録された土壁で周りを囲んだ集合住宅を住処にしている。
1700年もの歴史を持つこの建築群の中でも高齢化は進み、若者たちは都市へ流れていく。
荒廃していく住処と歴史と経済の波に飲まれて行く人々。
ここに住む人、そして離れていった人々中にある"HOME"。
それは形あるものではなく受け継がれていく心のなかにあるもの、として中村さんは捉えています。
タイトルからも分かるように中村さんは目を惹く建築ではなく、そこに住む人のポートレイトを撮り続けました。
門をくぐることで始まるこの本を読み進めていくと心の内側に入り込んでいくような錯覚に陥ります。
黄色い光の中に包まれた穏やかな客家の人々の表情と瞳(ここを見て欲しい)に迫りくるものを感じます。それが恐らく読者それぞれのHOMEなのだと思います。
カバーの写真は農作業から帰ってきた95歳の女性。彼女は生まれて始めて写真を撮られたそうです。
巻末の特別寄稿に詩人の田原「写真は光の詩」
著者:中村治 出版社:LITTLE MAN BOOKS 2019初版 260×280mm 120p ハードカバー/クロス装
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