〈ただ「見よ」というばかりでは、せっかく興味を持った人がいたとしても、その壁をどのように越えればいいのか。工芸の世界もそろそろ語りにくいことを語る、そのような努力が必要になっているのではないでしょうか。もしもその言葉によって、誰かが工芸という新たな扉を開くことができたら、それは素晴らしいことではないでしょうか〉(三谷龍二「はじめに」より)
最後に三谷さんはこう述べられています。
「現在のような高度のテクノロジーの時代に、人が手を動かしてものを作ることにどのような意味があるのでしょうか。」
作り手自らが自身の作品や既存の価値観を批評する。一歩踏み出して、手を動かしながら、作品や「言葉」で答えていかないといけない、と。
感覚から身体を経て言葉へ。批評が伴う緊張と勇気を持って、6人の著者がそれぞれに現代と作品に向き合い紡がれた言葉が記されています。
松屋銀座デザインギャラリー開催の「工芸批評」展(2019年10月9日-11月6日。三谷龍二監修。井出幸亮、鞍田崇、菅野康晴、高木崇雄、広瀬一郎出展)にさいして刊行。監修者、出展者および美術批評家の現代工芸論を収録。また各人の工芸観を体現する25作品を掲載、解説。後半は工芸本25冊の書評と、ブックリスト(工芸について考えるための100冊)を掲載。
■著者
井出幸亮|Kosuke Ide|『Subsequence』編集長|1975年生れ
鞍田崇|Takashi Kurata|哲学者|1970年生れ
沢山遼|Ryo Sawayama|美術批評家|1982年生れ
菅野康晴|Yasuharu Sugano|『工芸青花』編集長|1968年生れ
高木崇雄|Takao Takaki|「工藝風向」代表|1974年生れ
広瀬一郎|Ichiro Hirose|「桃居」店主|1948年生れ
三谷龍二|Ryuji Mitani|木工家|1952年生れ
著者:井出幸亮/鞍田崇/沢山遼/菅野康晴/
高木崇雄/広瀬一郎/三谷龍二 装丁:米山菜津子 撮影:久家靖秀 発行:新潮社青花の会 2022 2刷 A5判|並製本|112頁
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