登場人物たちの描写はまるで映画のように今にも動き出しそうだ。
何でもない細部の積み重ね、風景の移り変わり、僅かな心の機微、小さな時間の蓄積がこの長編を名作たらしめている。
ジョージア出身のこの偉大な作家が南部を舞台に経済格差や黒人差別の元に生きる人々を描き続けたその意義は大きくなるばかりだ。
友のために生き、ただ黙って人々の声を吸収していくこの聾唖の男は読者によって見方は変わるだろう。心のようにつかみどころのないこの人物が灯火のように読者の内面に浮かび上がり、座っている。
個人的には「結婚式のメンバー」よりこちらを推したい。
発表は1940年
村上春樹が「最後のとっておき」にしていた古典的名作。
著者:カーソン・マッカラーズ 訳:村上春樹 出版社:新潮社 2020.10 3刷 ソフトカバー 398p
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