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flowers / 奥山由之 Yoshiyuki Okuyama

花を媒介とした、亡き祖母との対話

奥山由之の新作は「花」の写真集です。
恐らく奥山自身にとっても特別な意味を持つ一冊です。
自身のアトリエとして使う亡き祖母の家で撮影された花はぼやけた輪郭を持ち、個人的な記憶を辿るように(流れていく映像のように)写し出されています。祖母との対話と述べ、それはつまり「美しい」「儚い」と言った形容だけでは捉えきれない物語がこの写真にはある。読者もまたこの本に触れ、写真を見ることで様々な記憶が浮かび上がるでしょう。「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」というある映画監督の言葉を思い浮かべずにはいられません。写真家の個人的な物語が深淵な芸術を生み出す、というその真実がこの本には宿っています。


以下、版元より
奥山由之が長年撮りつづけたこのシリーズは、亡き祖母が暮らしていた家で撮影されました。この場所をいま自身のアトリエとする奥山は、射し込む光に、庭に揺れる草木に、生前の祖母を偲び、多くはなかった会話をあらためて紡ぐように、花を撮り重ねてきたのです。

80年代に祖父が使用していた110フィルム(ワンテンフィルム)という小さなフィルムを用いて撮影された花々は、部屋のクラシックな意匠やカーテンとも合わさり、花と向き合う自由な視点や角度に引き付けられます。
中でも、窓という絵画的なモチーフを用いて、外部の流動感や瑞々しさと内部のほの暗さを印象づけ、内から外への眼差しや、光の中で花に近づく揺らぎある視点において、祖母と自身とを重ね合わせています。窓に映り込む花と、ここにある花。窓を挟む室内の花と、庭の花。花を撮ることによって無数の対話が交わされます。

その流れのなかに織り込まれるキッチンや書斎、寝室など空間を撮った写真には、異質な視覚が生じています。大判カメラのコンタクトシートや中判カメラ、35ミリ、ポラロイドなど様々なカメラを用い、生前の祖母の視点、亡き祖母の漂う視点、そして自身の視点が現れるようです。
一枚の写真における視線の重なり、そして全編を通じての視点のレイヤーは「flowers」の大きな試みといえるでしょう。

また、一冊のなかに融け合う、古い家族アルバム、祖母と共にあった家や家具、そして今を咲く花という時間軸のグラデーションは、写真のフォーマットや手法においても表出されています。祖母が生きていた時代から存在したフォーマットと、片やコンタクトシートのスキャニングや、映像から静止画へと切り出されたもの。「flowers」の奥行き、眼差しや感覚の混交に、幅のある時間・歴史が息づいています。

本書に登場する花は、フラワークリエイター篠崎恵美(edenworks)さんにより提供された、棄てられてしまうはずだった花々です。
時折登場する花瓶を持つ手、花を差し出す手 ─ 自身であり他者であるだろうその手は、それぞれの記憶に触れるものです。

著者:奥山由之 出版社:赤々舎 2021 デザイン:葛西薫 安達祐貴 H261mm × W216mm 152p hardcover
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5,500円(税込)

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