自分だけの 朝を
おまえは 欲してはならない。
照るところがあれば くもるところがあるものだ。
崩れ去らぬ 地球の廻転をこそ
おまえは 信じていればいい。
陽は おまえの 足下から昇つている。
それが 大きな 弧を描いて
その うらはらの おまえの足下から没してゆくのだ。
行きつけないところに 地平があるのではない。
おまえの立つている その地点が地平だ。
まさに 地平だ。
遠く 影をのばして
傾いた夕日には サヨナラをいわねばならない。
ま新らしい 夜が待つている。
(自序)
◎「在日を生きる」詩人・金時鐘の半世紀にわたる、肉声がつらなり、響きわたる詩選集。
◎本詩選集は、第1詩集『地平線』、『新潟』、『猪飼野詩集』、高見順賞の『失くした季節』ほかの詩集、さらに最近の詩(単行本未収録)などから、代表作38編を厳選。生涯の詩の軌跡を辿ることができ、金時鐘の詩の世界を知る格好の入門書。
◎巻末の解説は、金時鐘の詩友で編者の丁海玉が、丁寧に詩人の遍歴、詩が問いかけるものを語る。
◎金時鐘夫人、カン・スニの姪で画家パク・ヨニの絵がカバーを飾り、本文には、カン・スニが描いた詩人のスケッチがおさまり、個性的な詩集の装いを見せている。
著者:金時鐘 編:丁海玉 装丁:佐野裕哉 出版社:港の人 2018.3 初版 ソフトカバー 48p
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