愛のすり切れた二十一世紀の波打ち際
わたしたちの旅の道程は
虹のように喜びと悲しみの両岸へと
続いているのではなかったか
大きなクジラたちが殺され続けた深い湾では
まだ皿は空っぽのまま
なみなみとしたものを満たすために待たれている
(「受粉の日」より)
小説家・詩人稲葉真弓の遺稿詩集。92年に発表した『エンドレス・ワルツ』が話題を呼び、数々の文学賞を受賞しながら、生涯にわたってひたむきに小説家としての歩みを続けた。また10代から培った詩の精神を片時も手放さず、詩作に励んだ。
本詩集は、稲葉自身によって病床で企図されたもの。文学者としての生命と使命が、3.11の祈りとしてここに昇華した。最後まで希望を失わなかった詩人の力強い声が響き渡る詩集。私たちは、この祈りと勇気を受け継がねばならない。(港の人)
著者:稲葉真弓 装丁:関宙明 出版社:港の人 2021.6 初版 ハードカバー 105p
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