「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
苦手な音をどもってしまうぼくは、クラスの朝の発表でもまったくしゃべることができなかった。放課後にむかえにきたお父さんは、そんなぼくを静かな川べりにつれていって、ある忘れられない言葉をかけてくれた。
カナダの詩人ジョーダン・スコットの実体験を元にした物語と絵は同じくカナダの画家シドニー・スミスによる絵本。
詩人は吃音に悩む少年と寄り添う父親の優しさを詩のように綴り、シドニー・スミスの絵は孤独な表情を浮かべる子どもとなみをうち、うずをまき、くだける川を繊細にかつダイナミックに描かれています。
クラスの目が一斉に自分を見ている時や上手く話せなかったあの時の気持ちを持つ人なら誰もが胸を打たれるのではないでしょうか。僕も吃音ではないかと悩んでいた時期があったので心揺さぶられるものがありました。
けれども、水と光に包まれたときのあの恍惚が蘇る温かい一冊です。
表紙タイトル文字は荒井良二
文:ジョーダン・スコット 絵:シドニー・スミス 訳:原田勝 出版社:偕成社 2021.7 初版 ハードカバー 42p
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