「リンカーンとさまよえる霊魂たち」でブッカー賞を受賞したジョージ・ソンダースの2005年の作品が遂に文庫化。
(日本語単行本は2011年)
"国が小さい、というのはよくある話だが、<内ホーナー国>の小ささときたら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は<内ホーナー国>を取り囲んでいる<外ホーナー国>の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった。"
この小さな国に現れた熱狂的な演説で民衆を魅了し、独裁者にのしあがっていく中年男フィル。
巧みな文章で大いに笑いますが、人間の可笑しさと恐ろしさが見事に描写されています。
ルワンダの虐殺やヒトラーが念頭にあったらしいですが数年後にトランプ政権が誕生したことや、現在の社会情勢と重なり、読めば読むほど背筋が凍るお話です。
翻訳は岸本佐知子。つまり岸本ファンは必読かと。
著者:ジョージ・ソーンダース 訳:岸本佐知子 出版社:河出書房新社 2021初版 文庫 157P
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