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日本移民日記

「いない」と言われても僕はここに「いる」


本書にも付録として収録されている「僕らの孤独の住所は日本」を『図書』で読んだとき、この人の書く孤独を理解しようとし、何度も読み返し、音楽も聴いた。たくさん本を読んだりたくさん音楽を聴いていると、この人の言っていることは本当だ、心の底から伝えたいことがあるのだ、と分かることがある。この本は言うまでもなく「本物」の本だ。
2010年に韓国から留学生としてやって来て以来、差別や排外主義にさらされ、それでも大阪池田を拠点に活動するこのラッパーは今、未来の日本の子どもたちに、声を持たない誰かのために、同じく孤独に過ごす移民のために、声をあげている。
この本では約10年間の日本での体験を振り返りながら眼差しは今と未来へ向けられている。
MOMENT JOONの他に、いったい誰がこのような書き方が出来ただろう。
孤独と希望は隣り合わせで手を差し伸べられるのを待っている。

1 「いない」と言われても僕はここに「いる」
2 日本語上手ですね
3 引退します。ホープ・マシーン。
4 井口堂から、次のホームへ
5 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(前編)
6 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(後編)
7 僕が在日になる日
8 シリアス金髪
9 バッド・エンドへようこそ
10 私の愛の住所は
付録 「僕らの孤独の住所は日本」

■編集部からのメッセージ

この本にはMOMENT JOONという不世出のラッパーが、日本で十年を過ごすうちに体験し、思考したことが詰まっています。
ヒップホップには「セルフボースト」と呼ばれる文化があります。一言でいえば「自分であることを誇る」ということです。ただし、抑圧された人間が「自分であることを誇る」ためには、多数派で構成された社会から、自分の声、自分の表現、自分の歴史と呼べるものを見つけ、再定義し、奪い返さなければなりません。

2020年発表のアルバム『Passport & Garcon』は、MOMENT JOONが「移民」としての自分を表現したアルバムでした。日本社会における排外主義の興隆や差別意識の蔓延、同調圧力、シニシズムといったものを怒りや不安とともに突きつけ、その上で「君が居るから日本は美しい」と歌っています。このアルバムは、これまでの日本のヒップホップでは描かれなかった世界を表現したものとして絶賛されましたが、いっぽうで作品そのものに向き合うことなく、「社会派」や「シリアス」といった狭い領域に押し込めてしまうような批評も散見されました。

それは作品に原因があるのではなく、差別や排外主義について真正面から語られたときに、その当事者の言葉を及び腰にしか受け止められない、この社会の側に問題があると私は思っています。

帯の惹句には「日本語表現に新たな地平を切り開く」と入れました。日本語の外の世界で生まれ育って、日本社会に来た経験を持つMOMENTの言葉にぜひ注目してほしいです。それはたとえ耳が痛い指摘であっても、この社会の狭さを改めて気づかせてくれるものであり、大きな希望であると考えています。

連載では十年間考えてきたことを惜しげもなく吐き出してくださいました。これは日本のヒップホップに金字塔を打ち立てたアルバム『Passport & Garcon』とあわせてこれまでの経験の総括であり、これからさらに活躍が見込まれる表現者の今後の十年にとって、大きな出発点になる本だと思います。ぜひご一読ください。

著者:MOMENT JOON 装画・
挿絵:芦野公平 装丁:川名潤 出版社:岩波書店 2021.11 初版 ソフトカバー 198p
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