2002年発表後、著者逝去を経て遂に文庫化。
フェミニズム批評を牽引し続けた著者の代表作。
”たとえばわたしたちが「女」や「男」というとき、それはいったい何を意味しているのだろうか。いわゆる女らしさや男らしさ、また女特有の仕事、男特有の仕事といったカテゴリーがもはや虚構であることは、おそらく過去数十年のフェミニズムの貢献によって認知されてきた。だがそれでもなお、女の性欲望、男の性欲望といったカテゴリーはいまだに健全に流通しているのではないだろうか。しかし女の性欲望、男の性欲望といったものはいったいどのようなものなのか。そこに何か普遍的な事実性はあるのだろうか。”
個人的な物語と集合的な物語の関係性に始まり、セクシャリティ、フェミニズム、アイデンティティについて議論を重ねる。変貌する社会と性の制度。「語りえぬもの」に声を与えるべく凄まじい密度で展開される「愛」についての政治学。
序 「愛」について「語る」ということ
第一章 〔ヘテロ〕セクシズムの系譜――近代社会とセクシュアリティ
第二章 愛について――エロスの不可能性
第三章 あなたを忘れない――性の制度の脱‐再生産
第四章 アイデンティティの倫理――差異と平等の政治的パラドックスのなかで
第五章 〈普遍〉ではなく〈正義〉を――翻訳の残余が求めるもの
著者:竹村和子 出版社:岩波書店 2022 初版 文庫 418p
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