枇杷を食べていたら、やってきた夫が向かい合わせに座り、俺にもくれ、とめずらしく言いました。肉が好きで、果物などを自分から食べたがらない人です。
「俺のほうはうすく切ってくれ」
さしみのように切るのをまちかねていて、夫はもどかしげに一切れを口の中へ押し込みました。
「ああ。うまいや」
枇杷の汁がだらだらと指をつたって手首へ流れる。
（枇杷 / 武田百合子）
1970年代の終わりに北宋社から出版された「イメージの文学誌」シリーズの一冊。
「食」というより「食欲」に焦点を当てたアンソロジー。
食べることの不安と喜び、恐怖と快楽。
萩原朔太郎、室生犀星、志賀直哉、小泉八雲、内田百間、夢野久作、吉行淳之介、赤瀬川原平、宮沢賢治、安部公房、谷崎潤一郎、岡本かの子、種村季弘、そして武田泰淳ら30名の作品を収録。
多数の図版も含め、シュルレアリスティックな空気が流れています。
�機／緻�桃を食べる
�供／佑魘瑤�
�掘＼于瑤鴦�る
�検／考緞�象を啖う
絶版
監修 ：武田百合子 出版社：北宋社 1978 初版 ソフトカバー/ビニールカバー付き
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