すこし汚れているけれど
ぼくが生まれたこの街よ
よりそいあった屋根の上
ほんのちいさなひだまりで
まるくなってる三毛猫も
みんな知ってる顔なじみ
まだ遠くない昔だが
ここらはみんな焼けたのだ
あたり一面火の海で
銃ももたないひとたちが
戦争のために死んだのだ
茶色にこげたやけあとで
ちいさなぼくはないていた
(すこし汚れているけれど)
よく知られているようにやなせたかしの創作は戦争体験が元になっています。
二度とあんな思いはしたくない、させたくない、という願いが絵や詩に込められています。
本書は五つの連作で発表された「愛する歌」の第五集。
人を愛することの喜び、哀しみ、寂しさ。
絶版
著者:やなせたかし 出版社:山梨シルクセンター出版部 1972 初版 ハードカバー
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