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演奏家の指が、小さな生き物のように、楽器の上をくるくると動くのを見ると「ああ、すばらしい指だ」と思うのだけれど、それと同時に「この指が、怪我でもしたらどうしよう」と思ってしまうことは、自分の心のうしろめたい秘密である。

知り合いの女性の家の近くには、川が流れている。子供を抱いて橋を渡るたびに、彼女は「どうしよう、この子を川に投げ込んでしまったら」と思うのだそうだ。なぜ私たちは、そんなことを思ってしまうのだろう。

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私もこんなことを考えてしまう人間で、こんな風に考えてしまうのは私だけではなかったのだと感慨に耽った。ああそうだ、世界はこんな風に出来てるんだなと妙に優しく肩を叩いてくれるようなエッセイが59編。
あたしンち』の共作者にして俳人、漫画家のオットでもある著者による、初のエッセイ本。
漫画のネタを考え、俳句を書き・読みつづけてきた日々の暮らしから抽出された、この世界の「成分」。
いくつものディテールをみつめる、愉快な日常と思索の数々――
保坂和志推薦。

著者:上田信治 出版社:素粒社 2022.1 ソフトカバー 220p
新刊書籍

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販売価格
1,760円(税込)

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