お父さんが二十歳前のころは、「戦争」というのがあって、
「ゼイタクは敵だ」
というようなポスターなんかが駅にはり出されており、旅行なんかもあんまりできなかった。
「太平洋戦争」という大きな戦争が始まると、結婚式とか正月以外あまり笑う人もいなかったようだから、お父さんも一ヶ月に一度位しか笑わないようにしていた。
新聞や町の広場には、
「ほしがりません勝つまでは」という標語がやたらにはられており、物を欲しがると「国賊」だとののしられる時代だった。
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左手を失い、マラリアに苦しみ、生死の境をさまよった過酷な戦争体験と「小さな天国」だったと語る現地ラバウルの人々との交流。
初版(1985年)、増補版(1995年)を経て遂に新装復刻です。
水木しげるが残したありのままの体験の記録。
著:水木しげる 出版社:河出書房新社 2022 文庫 270p
新刊書籍