小説を読む愉しみはいったいどこにあるのだろう? 時間と空間をさっととびこえて、目的もなく自由な世界に遊ぶ。思わぬ視角から新しい宇宙をとらえる。
その〈読み〉の見本帖がこの一巻である。緑雨の探偵法に一葉の書簡案内から荷風のアメリカ、牧水のすぐれた記録者の目など、読みの醍醐味が味わえること必定である。また、海坂藩と豊島園・鬼平とバブル経済・狂四郎とテレビ時代など、ちょん髷にネクタイをつけた主人公たちの活躍を時代をこえて堪能できる。
(みすず書房)
I 文学探偵帖
あの一件 斎藤緑雨/手紙の書き方 樋口一葉/覗き穴 夏目漱石/母親と恋人 岡本かの子/錯誤の一瞬 梶井基次郎/少女の生理 幸田文/透明人間 安部公房/家出のすすめ 寺山修司
II ちょん髷とネクタイ
藤沢周平と豊島園/池波正太郎とバブル経済/柴田錬三郎とテレビ時代/有吉佐和子と女の戦い/五味康祐と情報戦争/海音寺潮五郎の男たち/松本清張と金の山/司馬遼太郎と張り扇
III 伝綺肖像館
鉄道時代——永井荷風/剃刀の話——志賀直哉/記録者の目——若山牧水/姥捨——太宰治/文書博士——澁澤龍彦
著者:池内紀 出版社:みすず書房 2004初版 ハードカバー 301p
C(帯付/天シミ他美品)