わたしは思い出す、涙は意外と出なかったことを。
わたしは思い出す、14時7分を。
わたしは思い出す、同じ布団で寝始めたことを。
わたしは思い出す、福田パンの焼きそばパンを。
わたしは思い出す、ステージへ行こうと引っぱる手を。
わたしは思い出す、トイレでおしっこができたことを。
わたしは思い出す、制服は少し大きめのサイズがいいと言われたことを。
わたしは思い出す、音楽教室をはじめてズル休みしたことを。
わたしは思い出す、「ママ、こっち向いて寝ないの?」と言われたことを。
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仙台市の沿岸部に暮らすかおりさん(仮名)。
2010年6月11日に第一子を出産した彼女はその日から育児日記をつけ始めます。
その矢先に発生した大地震。
かおりさんはその後も手書きの日記を一日の終わりに、ひとりダイニングで綴り続けました。
本書は震災から10年、育児日記を書き始めて11年の節目に、編集者との出会いから自らその日記を再読し、回想したその語りを聞き書きして記録したものです。
あるひとりの女性、「私」の生活史。
巻末には11年分の「保管物目録」を写真、コメント付きで掲載。
bbb大推薦の一冊。
企画:AHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ] 発行: remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]2023.1 W110×H160 / 並製 / 832p
新刊書籍