《私の好きな小説の主人公に共通しているのは欺瞞やごまかし、半端な妥協に溢れているにもかかわらず平気な顔をして回り続ける世界への苛立ちを持っていることだ。苛立つのはそれが変わるのをどこかであきらめきれていないからだ。そしてこの間違った回り方をしている世界に馴染むまいとし、じたばたする》
——本書より
「のどがかわいた」で詩を読むことについて新鮮なパースペクティブを与えてくれた大阿久佳乃さんの新作はアメリカ文学。
ソロー、スタインベック、リンドグレーン、サリンジャー、サローヤン、マッカラーズからトニ・モリスンまで。
世界と対峙し、内面で戦う主人公たち。じたばたする人物たちが自身とリンクする感覚。
本を読むことと、生きることが、リアルに接続されていくのでした。
もちろん海外文学への入り口としてもお楽しみください。
情けない人々
——ソール・ベロー『この日をつかめ』
鮮やかな乾き
——スタインベック『赤い小馬』
私たちの引っ越し
——リンドグレーン『ロッタちゃんのひっこし』
帰る場所を求めて
——セアドー・レトキーの詩
ホールデン・コールフィールドに捧ぐ
——J・D・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
最近読んだものの周りうろうろしつつ東京に一人暮らししてる友人に向けて
——マーシャ・ノーマン『おやすみ、母さん』
他人という「気」
——ウィリアム・サローヤン『人間喜劇』
離れる
——パヴェーゼ『月と篝火』
鏡
——カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』
まだ消えていない炎のこと
——カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』
一人の中の多数の人間
——マリオ・バルガス=リョサ『ケルト人の夢』
「もの」そのものへ
——W・C・ウィリアムズの詩
ぶらつく詩人
——フランク・オハラの詩
孤独と優しさ
——エリザベス・ビショップの詩
それがこれです
——ガートルード・スタインの「自伝」
根を求める
——金関寿夫『アメリカ・インディアンの詩』
(私たちの)願いのこと
——トニ・モリスン『青い眼がほしい』
親愛なる私(たち)へ
——アドリエンヌ・リッチの詩
著:大阿久佳乃 装丁:納谷衣美 出版社:サウダージ・ブックス 2023 ペーパーバック 176p
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