生活は腐敗との戦いだから米を炊けフォーエバー
もうずっと前に無くした気がしていた正気が鞄の底で見つかる
改札に向かうレースの一等になれたことない一度すらない
永遠を信じましょうよ冷凍庫入れれば賞味期限は無効
活躍をお祈りされる筋合いはないが見たいのなら見せてやる
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歌人として活動するほか、habotan名義で土人形を制作している寺井奈緒美による、初の短歌&エッセイ集。
くどうれいん、小原晩と当店でも絶好調の歌人によるエッセイですが本書も思わず拍手を贈りたくなるほど面白い。
短歌もエッセイも驚嘆するのは生活への観察眼。発行元のELVIS PRESSが言うところの対象との「距離の取り方」。日常で繰り広げられる滑稽さを一筆書きのような軽さでユーモアに書き換える。
”限られた行動範囲(ほとんどが部屋、そして職場、西友、たまに映画館)と限られた登場人物(私、共に暮らすS、ときどき同僚)の中でのまったく映えない日常。それがなぜだかすこぶる面白い。”
この面白さ、誰でも書けるようで書けないんですよね。
寺井奈緒美(てらい・なおみ)
1985年ホノルル生まれ。愛知育ち、東京在住。趣味は粘土で縁起のよい人形をつくること。
2019年4月、新鋭短歌シリーズ『アーのようなカー』( 書肆侃侃房)刊行。
2023年4月、短歌とエッセイ『生活フォーエバー』(ELVIS PRESS)刊行。
著者:寺井奈緒美 装画・挿画:楢崎萌々恵 発行:ELVIS PRESS 2023.10 2刷 19cm×12.8cm 224P
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