かつて遊廓を生きた女性たちが書いた日記や小説は、時の隔たりをこえて、ふたたび現在に響き始める――。
悲しみ、怒り、苦しむ人びとを、たったひとりにさせないために、人びとの歴史の〈声〉を記憶し、描き出す。
歴史家であり小説家でもある著者はまず、現代に生きる人々の様々な声(著者自身の声も)や現代社会の過酷な状況を整理、開示し、かつての遊郭に響く声をたどり、現在へ描いていきます。
荒れ果てた森の原因を探るため更に深部へ歩んでいくような試み(物語)に引き込まれます。
[目次]
はじめに 〈声〉をたどる
第一部 生活を形作るさまざまな〈声〉
第一章 たったひとりにさせない/ならないために――危機の時代の分断をこえて
第二章 だれが教育を殺すのか――大学非正規教職員雇い止めの荒野から
第三章 クィアがここに住んでいる――不可視化に抗して
第二部 遊廓のなかに響く〈声〉
第四章 遊廓のなかの「新しい女」――和田芳子『遊女物語』が切り拓いた地平
第五章 ものを読む娼妓たち――森光子と松村喬子の作品に描かれる「読書」を中心に
第六章 闘争の時代の余熱のなかで――森光子『春駒日記』の描く吉原遊廓の日常風景
第三部 響きあう〈声〉
第七章 共鳴する言葉――娼婦から娼婦たちへ
おわりに 〈声〉に耳を傾けること――歴史叙述と小説の境界から
あとがき
著:山家悠平 装丁:川名潤 出版社:青土社 2023 ソフトカバー 248p
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