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穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って

夜の森を彷徨い歩く、天使みたいな若者だった。

「今年は天才がいるよ。」
東京藝大在学時より注目され、25歳で急逝した画家は、「壊れた機械」のように描き、エヴァーグリーンの思い出を遺して、駆け抜けて行った。
両親、友人、恋人たちなど、あらゆる関係者への取材と書き残された150冊ものノートから読み解く本格評伝。

"「今年は天才がいるよ」。東京藝大の卒業作品展で中園の油彩画を観た彫刻科の教授は、そう感想をもらした。この直感は的中し、その後、中園の作品は東京都現代美術館や神奈川県立近代美術館に所蔵され、六度の個展開催、グループ展への出品など、評価と人気の高まりはとどまるところを知らない。 著者の村岡俊也はこの藝大教授と偶々アルバイト先で出会ったことから、中園の存在を知る。また、奇しくも鎌倉の美大予備校で中園に絵を教えた講師とは旧知の仲だった。めぐりあうべくして中園にめぐりあった村岡はご両親の紹介などを受け、中園を知る人たちから丹念に話を聞いていく。そこで浮かびあがってきたのは、絵画作品と同じくらいに不可思議で、魅力あふれる人物像だった。甘いマスクとは裏腹に危険な場所に赴くことを好み、都心やヨーロッパで野宿してまわる。向こう見ずで、天使のような慈愛に満ち、親交のあった人たちや彼女たちの回想するエピソードは青春映画のワンシーンのよう。150冊ものノートには自身や周囲、絵画への悩みや葛藤も綴られ、若くして手にした成功とは別に暗い影に囚われていた。"

はじめに わからなさの手触り
第一章 ホラー映画観たい、みたいな気持ち
第二章 絵のマグマ
第三章 忘我の季節
第四章 薄い透明な膜
第五章 どうにもできないこと
第六章 絵と音楽の出来る場所
第七章 消えない光
あとがきにかえて


著者:村岡俊也 出版社:新潮社 2023.8 ハードカバー 221p
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