誰だろう毛布をかけてくれたのは わからないからしあわせだった
遠い人の最寄り駅までやってきて駅構内がどこもまぶしい
ちょうどいい気温にふれてごきげんな七分の袖をはみだした腕
酔ってない 車窓におでこをあててみる 大きなことを言った気がする
おもむろに愛のことばを 起きなくていい日に鳴っている目覚ましに
夜だからさびしいなんて嘘じゃない? さびしいだからさびしいじゃない?
冬の息 できないことをかわいいと言わないきみの吐き出す光
乗ってきた電車を夜に見やるとあんなまぶしい中にいたっけ?
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進化を続ける岡野大嗣の第4歌集。
この人は天才だなと何度か思ったことはあったが今作ではある種の凄みを感じる。
とは言えやはり根底にあるのはさみしいをうれしいに変える魔法のような歌だ。
チェックの模様の入った幸福という名の歌集だ。
岡野さんはどんな時もHow are you?と歌っている。
閉塞感のあるこの時代にこのような歌を書きつづけることに惜しみない拍手を贈りたい。
いつもありがとう。
著者 :岡野大嗣 装幀:名久井直子 出版社:太田出版 2023.10 初版 ハードカバー 141p
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