韓国文学翻訳の第一人者、斎藤真理子の読書エッセイ。
「図書」連載時から興奮して読んだ。
取り上げられるのは少し時代を遡った古い本であり、登場する人物は皆どこかで虐げられた人々であり、そしてこの国の歪みを突きつける。しかし、だからこそ、読む価値があるのだと思わせられる、その筆力に舌を巻く。
装画は高野文子
目次
黄色い本のあった場所――「チボー家」と私たち 1
黄色い本のあった場所――「チボー家」と私たち 2
いぬいとみこさんのこと
結核をめぐる二つの物語――林芙美子と郷静子
多摩川沿いの工場で――「土堤」を読む 1
多摩川沿いの工場で――「土堤」を読む 2
「かるた」と「ふりかけ」――鶴見俊輔の「断片」の味
翻訳詩アンソロジーの楽しみ
杏の枝と七夕の夜――後藤郁子と茨木のり子
炭鉱町から来た人
詩人・仲村渠の路地をたどる
一九一六年、漱石と李光洙
旧正月の李箱の手紙
脱北者が読むジョージ・オーウェル
元山中学の同級生――後藤明生と李浩哲
長璋吉が描いた朝鮮語の風景
物語に吹く風 朝鮮短篇小説選
堀田善衞と「ジョー」の肖像
「やさしみ」のやりとり
森村桂という作家がいた
マダム・マサコの洋裁店
編み物に向く読書
三人の女性の「敗戦日記」
中村きい子の激しさに打たれる
本の栞にぶら下がる
著者:斎藤真理子 出版社:岩波書店 2023.9 初版 ソフトカバー 203p
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