「すこしの勇気を持って、この人に語ってみよう、と思う。その瞬間、ちいさく、激しい摩擦が起きる。マッチが擦れるみたいにして火花が散る。そこで灯った火が、語られた言葉の傍らにあるはずの、語られないこと、語り得ないことたちを照らしてくれる気がして。それらを無理やり明るみに出そうとは思わない。ただその存在を忘れずにいたい」
(はじめに)
震災、パンデミック、戦争、自然災害…。
災禍について語る人と聞く人。伝える人と耳を澄ます人。
被災地を訪れそうした人々に会い行き、記録したり、語らいの場をつくって来た著者の瀬尾夏美さんはその日々の中で「語れなさ」に着目していく。
痛みに向き合う中で続いていく日常、その中で語られないこと、語り得ないことを記録するための物語。
著者:瀬尾夏美 出版社:生きのびるブックス 2023.11 初版 ソフトカバー 282p
新刊書籍