大阪を拠点に活動する写真家菅谷ケイスケの私家版写真集。
写真、デザイン、製本を全て自身で手がけている。

あの世とこの世のあわい、昼とも夜とも判別のつかない風景、何か（誰か）の気配。
導かれるままに街を徘徊し、引き寄せられるようにシャッターを切ったのだろう。
香で焼いたという無数に現れる穴は視点であり足跡か。

限定50部　エディションナンバー入
カバーは２種　ランダムでのお届けになります

著者ステイトメント：
普段から目にしているはずのものであっても、ふとした時にビビビッ、と眼を惹かれて、反射的に写真を撮ってしまうことがある。おそらく、時間や光など、あらゆる環境条件のバランスが整ったところに、偶然、自分が居合わせたのだと思う。しかし、なぜこの場面で、この写真を撮ろうと考えたのか、と聞かれると、なんだかすごくいい感じだったから？と地に足がついていない、いまいちな回答しかできない。眼が惹かれた状況に、なるべく素直に反応して、すばやく撮る、そのこと以外にあまり頭を使っていないゆえ、明確な意味や目的についてはほとんど考えていないのだと思う。どちらかといえば、意味や解釈は、現像した写真をみて、後から付け加えることのほうが多い。日記を書くように、そのとき自分の中に生じている感覚を少しずつ言葉にしてから写真を見ていくと、ふわふわとしていた気持ちが着地点を見つけたようにゆっくりと落ち着いていく。また、撮影時の状況とは必ずしも合致しないようなあたらしい感情や視点が浮かび上がってくることもあり、そのときは自分の視界が、写真を通してほんの少しだけ広がったような感覚になる。言ってしまえば、僕が勝手な思い込みや妄想をして遊んでいるだけなのだが、そんな時間にこそ、写真のおもしろさと自由があると感じる。
今回の写真集もそのような時間の延長で製作をしたので、わかりやすいコンセプトを設定するのが難しかった。ただ、この写真集が僕自身の「現在地」であるということはたしかで、ここから今後の活力を生み出していきたいと思っている。
手に取っていただいた方にとっても、この作品がなんらかの活力につながるものになってくれたらうれしい。