”短編小説をポケットに”
inch magの海外文学短編小説を紹介する「inch magazine PocketStories」(インチマガジンポケットストーリーズ)がスタート。
第一弾は近年文学界で注目される韓国SF小説。

人類が一度滅亡したあとの世界。「成長センター」で目覚めたアルムはすでに十五歳だった。生殖能力をなくした人類を再生するプログラムで急速な教育とリハビリを与えられたアルムは、ある日センターを逃げ出すが......。

本書は、2022年4月に韓国のSF雑誌「The Earthian Tales」のNo.2「TIME TRAVEL with you」号で発表された短篇作品の翻訳版です。 作者のファン・モガは日本に移住して15年、移民としての視点などを持ちながら韓国語でSF小説を書く作家です。2019年に韓国屈指のSF新人文学賞である第四回「韓国科学文学賞」の中短篇部門で『モ ーメント・アーケード』(2022年クオン刊)が大賞に選ばれてデビュ ーした、今後の活躍が期待される小説家。 近年、韓国ではSF小説が女性読者を中心に人気を高め、SF作家がK- POPグループのコンセプト作りやNetflixなどの配信サービスでのドラマ・映画のシナリオ執筆、企業が未来志向のビジネス活用を行う「SF プロトタイピング」などに起用され、韓国SF小説は隆盛を極めています。本書が描く世界は大きなテーマですが、韓国で加熱する教育格差や世界で問題になるジェンダー格差など、様々な不平等を描きながら誰にも普遍的な物語になっており、男性読者が中心であった正確な論理的な科学技術に基づいた本格的ハードSFとは異なる、「少し不思議= SF」で現実社会と向き合う作品です。

《巻末特別対談》 韓国に留学中で小説やエッセイなどを執筆する モデルの前田エマさん(「Hanako Web」など)と、「韓国SF小説が描くもの」について作者と対談しま した。格差やジェンダー問題などの現実社会の厳しさを韓国社会で見つめる役目として、文学や詩の重要性を民主化運動などを通して育んできた歴史のある韓国。現在、韓国に留学して感じる視点から語っていただきました。
(inch mag)