”可愛らしさという視覚的な記号を用いながら、ペニー・ダベンポートの作品は困難なテーマに向き合っているように見える。彼女のイメージの多くは寂しさ、疎外感、郷愁、無関心、あるいは内なる制約といった感覚を呼び起こす。”
オスカー・ギルバート(OTP Copenhagenディレクター)
リバプールを拠点に活動するビジュアル・アーティスト、ペニー・ダベンポートによる初作品集。
擬人化した動物がこっちに微笑みかけている?あるいは不安げに見ている?
彼らは手を取り合っている。彼らがどこにいるのは分からない。夢の国?
見ているこっち(人間)が相対化され、不思議な感覚に陥る。
人間の脆さ、弱さがこんなにも色彩豊かだなんて。
”ペニー・ダベンポートは、擬人化した動物や白昼夢のような風景を描くことで、身体が経験する心理的なニュアンスや人間関係の複雑さを探求しています。彼女の作品に登場する柔らかく垂れた耳や丸い鼻を持つ毛に覆われた生き物たちは、明らかに非人間的ですが、人間の特徴も備えています。二本足で立ち、しばしば手を取り合って集まり、共感と理解の感情を示唆するような目でこちらを見つめています。そして、生き物たちの仕草や表情を繊細に描くことで、見る者に主体性の投影と自己の不可思議な認識を促します。
彼女は、特定の教育を必要とする子どもたちの学校で長年働いてきたこともあり、人間のコミュニケーションの中にある暗黙のもの、間接的なものへの理解を深めてきました。それらの表現を探り続けた作品は、時に不思議な感覚を呼び起こしつつ、共感への合図となるボディランゲージの表現で満たされています。また、無邪気さや穏やかさが感じられる生き物たちの姿には、不安や寂しさ、居心地の悪さといった感覚も吹き込まれており、一見して受け取れる「かわいらしさ」の印象を時として一変させます。豊かな人間の心の機微が詰まった彼女の作品は、子供時代の半ば記憶されたイメージや不完全な物語の一コマ一コマのようでもあり、人間の心の奥に秘している何かについて語りかけてきます。
本書は、ダベンポートの近年のペインティングとドローイングに焦点を当てて構成しています。近年のペインティングでは、木板の上に直接描いたり、キャンバスの質感を生かすようなタッチを用いたりと、その表現の幅は広がっています。さまざまな気づきを与えてくれるダベンポートの作品を、若林亜希子が手帳をイメージした軽やかな一冊へと落とし込みました。いつも手元に置いて傍にいてくれるような佇まいの作品集となります。”
著者・Author :Penny Davenport ケニー・ダベンポート 執筆:オスカー・ギルバート(OTP Copenhagenディレクター) デザイン:若林亜希子出版社 publisher:Torch Press 2023 softcover 96p
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