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パレスチナ問題

〈私たちはパレスチナと呼ばれる土地にいた。たとえナチズムを生き抜いたヨーロッパのユダヤ人残存者を救うためであっても、ほとんど何百万もの同胞にパレスチナからの離散を余儀なくさせ、私たちの社会を雲散霧消させてしまったあの土地奪取と私たちの存在抹消とは、いったい正当化される行為だったであろうか。いかなる道徳的・政治的基準によって、私たちは自らの民族的存在や土地や人権に対する主張を捨て去るよう期待されているのだろうか。一民族全体が法律上存在しないと告げられ、それに対して軍隊が差し向けられ、その名前すら抹消するために運動が繰り広げられ、その「非存在」を証明すべく歴史が歪曲される。そんなとき、何の議論も沸き起こらない世界とは何なのだろうか〉

西洋のオリエンタリズム的・植民地主義的な視点が、いかにイスラエルの視点にすりかえられ、そこから「アラブ」に対する歪んだ表象が生み出されてきたか。問題の起源からシオニズム、バルフォア宣言、イスラエル建国、四次にわたる中東戦争、キャンプ・デーヴィッド会談をへて1990年代へ。本書は、現代世界の矛盾の象徴であるパレスチナ問題への最も信頼に足る基本文献であるとともに、サイードが渾身をこめて書き上げたもう一つの主著である。
(みすず書房)


著:エドワード・W・サイード 訳:杉田英明 出版社:みすず書房 2023 3刷 ハードカバー 440p
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