読み手の自由なんて言いながら、私たちが手にする本には、無理くり「情報」と差異化するならば、あまりに多くの「データ」が貼りついている。Dataという言葉は、「与える」という意味の動詞dateを語源とします。あなたが欲しいのはこれでしょう、という態度が透けて見える。
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こうしたデザインは、それを所有する消費者の形を勝手に決めているともいえます。消費者に対するサーヴィスでありつつ、彼らをデザインするマーケティングです。私たち自身もまた形をもつ情報、すなわちinformationなのです。
(本をめぐる こころの ことばの 形にふれる)
ロシア文学研究者である著者が東北芸術工科大学・文芸科にて行った講義をまとめたもの。ブックデザイン、物としての本について講義を依頼された著者が論理と倫理で本を語る。これほどに整然とそして批評精神を持って本について書かれた本を読んだことがない。静かな衝撃を受けている。
ブックデザイナー戸田ツトム、詩人平出隆ら先人の声を取り上げながら華麗な線を描いていきます。
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本も詩も、降って生るのを寝て待つのでなく、立ち上がり、足で強く地を蹴って、空を切るように手を伸ばし、架空を束の間摑んで作られる。だから人の心をかくも狂わせ、慄わせ、高鳴らせる。──本書「跋」より
著:澤直哉 出版社:港の人 2023 初版 ハードカバー 121p
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