長野県出身、神奈川県在住の写真家篠田優の写真集。
旧長野県信濃美術館の閉館から長野県立美術館の新設へ。
解体されていく建築、その断片を撮影し、拾い集めていく。
無数の記憶と微かな気配・余韻を感じられる。
桜や残雪、建築を囲う環境・季節にも目を向けて欲しい。
解体の始まった2017年から本作の発表までの7年間を費やした労作です。
作家本人と現在長野県立美術館で学芸員をつとめる松井正氏による寄稿文を収録。
以下、版元より
篠田優は日本で活動している写真家です。太平洋戦争時代に建設された遺構や、取り壊しを控えた公共建築などを主な被写体として、大判フィルムカメラや4K動画による精緻な描写によって、記録性と表現性を兼ね備えた写真・映像作品を制作しています。2013年の塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞を受賞し、その副賞として2015年には写真集「Medium」を発行しました。それに伴い東京を皮切りに、関西や東北、海外での展示活動も精力的に行っています。そして今回、喫水線より刊行する『Fragments of the place 2017-2019』は製作開始から発表までおよそ7年をかけた篠田の新作写真集です。
本作は、篠田が2016年に旧長野県信濃美術館の閉館に際した企画展に招聘されたことをきっかけに、その閉館から長野県立美術館の新設までを追い、映像と写真の両面から撮影を行ったものです。解体されゆく建築の姿を克明な像としてとどめ、ときに見過ごされがちな細部へと視線を注ぐその実践は、記録の遂行と共に記録を問うような営みでもあります。
本書籍の構成は、読者が篠田のまなざしの位置に立ち、あたかもその過程を追体験するかのような、クロノロジカルなものになっています。またそのような時間の進行は、建築を取り囲む草木や空、そこに住まう鳥や虫の四季折々の姿と相まって、長野県信濃美術館をある土地に息づいていたひとつの存在として、読者に認識させる一助ともなり得るものです。
篠田優 [しのだ・ゆう]
1986年長野県生まれ、現在神奈川県在住。 2010年上智大学経済学部経営学科を卒業後、2013年東京工芸大学芸術学部写真学科を卒業。 2021年明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻総合芸術系 修了。 主な受賞歴に、2012年 EINSTEIN PHOTO COMPETITION X2 岩渕貞哉賞、2013年塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞がある。
著者 Author:篠田優 Yu Shinoda 装丁:岡田和奈佳 出版社publisher:喫水線 2024 200mm×290mm ハードカバー(コデックス製本)
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