なぜそこにじっとしている?
なぜ自由に旅しようとしない?
白い雲が、黒い樹に言った。
三百年、わたしはここに立っている。
そうやって、わたしは時間を旅してきた。
黒い樹がようやく答えたとき、
雲は去って、もうどこにもいなかった。
(空と土のあいだで)
長田弘、晩年の傑作詩集。
森、林、そして木と土。
世界と人のあり様を最小限の言葉で描いた。
いつもいつまでも読み返したくなる一冊です。
I
世界の最初の一日
森のなかの出来事
遠くからの声
森をでて、どこへ
むかし、私たちは
空と土のあいだで
樹の伝記
草が語ったこと
海辺にて
立ちつくす
II
春のはじまる日
地球という星の上で
緑の子ども
あらしの海
For The Good Times
秋、洛北で
メメント・モリ
カタカナの練習
見晴らしのいい場所
nothing
私たちは一人ではない
あとがき
著者:長田弘 出版社:みすず書房 2024 8刷 ハードカバー 90p
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