僕、家族が亡くなったっていうことを、ある時まで人に言ってなかったんです。
偽りの家族っていうか、亡くなったにもかかわらず、さも居るように話してた時があって...
自分でもわかんないんですけど、多分母親とか父親の影響があるんじゃなかって思ってて。
家族っていうものが自分の描いていた理想みたいなものとはかけ離れてるっていうのをどっかで認めなきゃいけないんですけど、表沙汰には認めたくないっていうか。
だから友達の前では、夢を見てるっていうか...自分にとって家族っていうのが、すごく忌み嫌うもの、知られたくないというか、自分の中では恥部みたいなもんだと思ってました。
ー木村肇
これまで熊狩猟を生業とする「マタギ」や、競走馬の置かれた境遇とドラマを描いた作品、限界集落など、日本社会の中であまり知られていない、もしくは忘れられている事柄や存在に目を向け、力強く詩的なモノクロ写真で作品を制作・発表してきた作家木村肇の作品集。
写真を見てもインタビューを読んでもとにかく「寂しい本」というのが第一印象だった。それもこれまでに見たことがないくらいに。
輪郭はぼやけ、闇のような影が全体を支配している。死がひとつのテーマではあるけれど、悲しみはない。木村肇という写真家の持つナラティブが本という容れ物に収まっている。その容れ物を上から覗き込むようにして闇の向こうを探してみる。
前例のない家族写真と、制作のきっかけや家族との間の出来事を語ったインタビューで構成される。
ヴィジュアルアーティスト鈴木萌と写真家吉田亮人による出版レーベルThree Booksから。
「写真」というメディアを通して、社会や時代、個人的な葛藤や問題に正面から向き合い、作品を生み出している写真家やアーティストの「声」ともいうべき作品を、彼ら自身の声を通して紐解くシリーズ「koe project」の第一弾。
木村肇 1982年千葉県生まれ
大学で建築を学んだ後写真を始める。マタギ、北海道の競走馬、限界集落などの作品テーマを丁寧に取材し詩的な白黒写真を中心に描いてきた。近年では家族、旧ユーゴスラビア紛争、東京大空襲など自身や人々の記憶を辿る視覚表現に挑戦する。上野彦馬九州産業大学賞や、バッティンフォール写真賞(独)など数多くの写真賞を受賞。写真集はイタリア、フランス、ドイツ、日本から出版されている。
www.hajimekimura.net
著者 Author:木村肇 Hajime Kimura 発行 publisher:Three Books hardcover 155mm×215mm 148p
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