民族浄化という救いなき暴力の連鎖を凝視する。イスラエルと旧ユーゴスラビア、すさまじい暴力を受け続ける土地を行く珠玉の紀行文学。2005年に発表された名著が「ガザ侵攻」を受け、文庫化され緊急出版。上下共に書き下ろしを増補。
タイトルは高橋睦郎の詩から取られている。
上 イスラエル/パレスチナ紀行
テルアヴィヴからエルサレム、そして「壁」を越えパレスチナへ。
街を歩き、土地の人々と対話を重ねるなかで浮上する、ユダヤ人の定義不可能性。知られざるイスラエル社会の差別構造。そして壁に囲まれ暮らす人々の悲痛な語り。
下 セルビア/コソヴォ紀行
眼に塩を擦りこまれるよな分離戦争から数年後、著者旧ユーゴスラビアの首都と難民キャンプへ。「民族」と「宗教」による虚構に満ちた分断と、人々の複雑な葛藤。そして背後にうごめく西側諸国の脅威。
著者:四方田犬彦 出版社:河出書房新社(河出文庫) 2024
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