本は直線である
重力の制約をうけて折りかえし
ちいさく畳まれているだけで
ほんとうは遥かな直線
大陸に垂直に立つ
旅をする直線
インクは火薬でできているのだから
ひつぜんこれは導火線である
(棲みうつる日)
このごろ どういうわけか
自分の体がきれいに見える
制服に圧縮されているころ
あんなに硬く いまいましかった体
このごろは浴槽に浸すと
孔雀のようにふるえてみせる
(二十七歳)
冒頭の「星座」「四月の昼」「迷子」「二十七歳」読んで一気に引き込まれてしまった。
向坂くじらの第1詩集。
「しろねこ社」から出ていた名作が増補・新装版として復活しました。
この詩集を発表後、向坂さんは類まれな文章センスでエッセイを書き、小説を書き、一気に芥川賞候補にまでステップを踏んでいきます。
原点であるこの詩集、まだまだ読まれて欲しいと思います。
この言葉に果たして意味はあるのか?と何度も自問する。
それでも他者との「愛」と「理解」を諦めない。
魂と肉体を全力で駆動して詩を紡いでいくその姿勢に感嘆するばかりだ。
又吉直樹、今日マチ子、堀静香推薦
装画を含むイラストレーションは金子佳代
著者:向坂くじら 出版社:百万年書房 2024 ソフトカバー 230p
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