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new明るくていい部屋 / 金川晋吾(サイン入)

「私は「家族は大切」であり「大切なものは家族」みたいな考え方、家族と家族でないものを分断するような価値観に抵抗したい。ただその一方で、文ちゃんや玲児くんのことを「家族」と呼ぶことにしっくりと来るということも、事実としてある。家族という言葉を必ずしも毛嫌いしなくても、少しずらした使い方をすることでその内実を書き換えていくという方向もあると思う」

写真家金川晋吾が写したのは自身を含む女男男三人の共同生活。
日付の記された写真が5年分、そして巻末にはこの5年間で考えた「家族」「恋愛」「性愛」「食事」「生活」「家事」「撮影」、それから「他者との関係」とそれに伴う「自己の変容」について25,000字の文章が掲載されている。
ページを捲っていくと時間が流れていくわけだが、もちろん個々が何を考えているかはこちらからは分からない。そこには生活の場があるだけ。途中で男がひとり増える。わかるのはここには何かしらの事情があり、物語があること。そして彼女、彼らが幸福に見えること。
他者がいてはじめて自分が何者であり、何を考えているのかが見えてくる。
明るい部屋で「生」と「性」について考え続けるドキュメント。
読後は素晴らしい映画を二時間たっぷりと堪能したような気持ちになる。

以下、版元より

本作は、2019年から現在まで、アーティストの百瀬文と斎藤玲児と自身による、女男男三人の共同生活を、118点の写真と2万5千字の文章とともに綴ったものです。
2組の男女のカップルから始まった関係性は、三人での共同生活を経て、次第に変容していきます。金川は、血縁関係でもなく、婚姻関係でもない他者との暮らしを始めたことにより、難航する物件探し、共有スペースに対する三者三様の態度、家事の役割分担などに直面し、戸惑いながら一つ一つ手探りで実践していく中で、さまざまな「生」や「性」の在り方を模索していきました。2022年からさらに森山泰地が加わることで、四者の関係はさらに変容していくことになります。
時系列に並んだ五年間の写真、そして実直に綴られた素朴な言葉は、それぞれの自由を尊重する彼らと関わりあう中で、一対一の性愛関係や、ジェンダーなどの社会から要請される型から自然と逸脱していく、金川自身の容姿や考えの変化をも記録しています。
二面採光の部屋でくつろぐ彼らの生活は、伸びやかで開かれています。性愛ベースではない、新たな「家族」像が現在進行形で構築されていくこのドキュメンタリーは、私たちが現代を生きていく上での明るい希望となるでしょう。


著者 Author:金川晋吾 デザイン:田中せり 出版社 publisher:ふげん社 2024 ハードカバー A4変型(h230×w200mm) 152p
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