解説にあるように、ジェンダーを女の問題と考える風潮のなかで、男たちが自らの男性性と向き合う成果はほとんど蓄積されてこなかった。男性である著者はフェミニズムの動いに共鳴しつつも、自分の足元を見つめ続け、本書の執筆に至りました。一方で日本でも少しずつ男性作家による男性性への研究をまとめて本が出てきています。
家父長制、植民地化、南北分断、軍政、経済危機、兵役、、近現代の「男なら・・・」のこじれの歴史。その感情の澱をいち早く探究した韓国男子研究者の試み。
”「男」は理不尽な観念だ。ジェンダー間の格差・分断・差別の歴史の中で、男性は「男」であるがゆえに抑圧する主体だった。他方、「男なら…」という期待は、当事者に「失敗と挫折でがんじがらめ」の内的経験をもたらしてもきた。
本書は近現代史上の事象や流行語を手がかりに辿る。「男子(ナムジャ)」の苦難や煩悶が、非‐男性への抑圧と表裏をなしながら、いかにして社会を構成する人々全体の生きづらさに与ってきたか。朝鮮王朝時代、植民地化、南北分断と軍政、民主化、新自由主義化といった局面に応じて、男性性をめぐる新たな困難と、そこから噴き出る抑圧と暴力の構図が繰り返し出現した。終盤では、兵役が生む軋轢や、オンラインで拡散する苛烈なミソジニーとバックラッシュに揺れる2000年以降の社会の様相を見る。”
著者:チェ・テソプ 訳:小山内園子・すんみ 解説:趙慶喜 出版社:みすず書房 2024 初版 ハードカバー 四六変型 312p
新刊書籍