”短編小説をポケットに”
inch magの海外文学短編小説を紹介する「inch magazine PocketStories」(インチマガジンポケットストーリーズ)第二弾。
邦訳は初となる韓国で今注目のSF作家、パク・へウルのショートショート「鉄の種族」と短篇小説「ゆりかご惑星」の二篇を収める。
世界に蔓延る経済格差や人種差別の構造、そして人間の理性に迫る「気候変動+SF」。
「破滅SF」の一要素であった”気候変動・温暖化”が現在では数年前とはリアリティの強度が全く違って響いてくる。文明の滅んだ地球のレポートから始まる本書には最初から引き込まれる。文体も読みやすく、解説もあるのでSFが苦手な人にもぜひ読んで欲しい。
以下、版元より
「鉄の種族」は、地球を離れた人類の痕跡を探査する地球外生物の視点で「報告書」という形を取りながら、なぜ人類がいなくなったのか、ユーモラスな誤解などを混ぜながら推察するというショートショート。
短篇小説「ゆりかご惑星」は、両親を亡くしてたどり着いた国でゴミ清掃員として働く難民女性の回想録を通して語られるお話。より良い生活のために娘と家族の安全と引き換えに、人類が近い将来、地球外の惑星に移住できるようにテラフォーミング(地球化)する職を得るが、家族と何光年も離れた星でひとりその任務を遂行する中で様々な矛盾に葛藤していく。そして主人公はある行動に出る……。
中短篇ほどの長さながら、過去と現在、数十年後の未来に至るまでの物語と惑星を越えた母と娘の強いつながり、格差や差別の構造や難民であり女性であるという弱い立場の人間の目線といった様々な要素が描かれています。
表紙カラー、本文モノクロ80ページ、中綴じミシン製本
サイズ:W106mm×H184mm
著:パク・ヘウル 訳:廣岡孝弥 発行:菅原佑樹 装丁:坂脇慶 装画:松井一平 2024
新刊書籍