”夜、帰ってくると、電車を降りた瞬間に山の匂いがする。周りが真っ暗でも、戻ってきたなと匂いでわかる。自転車を漕ぎ出せば、冷たい風とぬるい風が交互に吹き、人間活動の残り香は草に呑みこまれていく。”
アスファルトの世界を離れ、わたしは秩父へ移り住むことにした――庭と植物、自然と文学が絡み合う土地で、真摯に生きるための「ことば」を探す。練達の仏文学者による清冽なエッセイ集。
東京から秩父へ引っ越した、ただそのことだけでこれほどに深い余韻を与えるエッセイを紡げるのか。土台にあるフランスと日本の文学への造詣がそれを可能にしている。
著者・写真:笠間直穂子 出版社:河出書房新社2024 ソフトカバー 224p
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