「生活工芸」の代表作家であり、「生活工芸とは?」という問いにむきあいつづけた木工家・三谷龍二さん監修の展観(「手の応答:生活工芸の作家たち」展/2024年11-12月於青花室)の図録として製作された。自身をふくむ12作家を6のテーマ──「手」「反」「外」「器」「貧」「弱」すなわち「生活工芸」の6要素──に分類し、解説を附す。作家たちの作品は、三谷さんとの対話をもとに制作された新作で(古道具以外)、彼ら自身の生活工芸論ともいえる一冊に。
文章は監修の三谷龍二、写真は『工芸青花』編集長、発行元「青花の会」代表である菅野康晴。
手|山本亮平 小澄正雄
反|大谷哲也 杉田明彦
外|辻和美 安藤雅信
器|内田鋼一 金森正起
貧|坂田和實 岩田美智子
弱|冨永淳 三谷龍二
”それにしても、あの時代、僕たちが身近に引き寄せたいと思った「生活」とはなんだったのだろう。過剰なものに囲まれ、自分の存在が稀薄化していくと感じていた。だから、自分の生命のかたちを、手を動かして物を作ることで回復できないか、と藻搔いていたのだった。そのために自己表現を諦め、社会のなかへと沈み、他者とのつながりを選択したのだ。
「生活工芸」が幸福だったのは、多くの使う人たち、橋渡ししてくれるギャラリーなどの支持があって、「作る」と「使う」がうまく循環し、輪が広がったことだろう。器は作り手のものであるとともに、使う人のものでもある。その、作る側からの一方的な押し付けではないあり方に、物作りの可能性を感じたのだった。”
(あとがきより)
文:三谷龍二 写真・編集:菅野康晴 装丁:大野リサ 出版社:新潮社(青花の会) 2024初版 B5判/上製本/カラー128頁
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