”ぼくらはみな、だれかの悲しみのよそ者だ。それでもなお、他者との間の線を手繰り寄せる。”
だれかの悲しみに同情すれば傲慢になり、共感すれば暴力になる。
あなたの悲しみ、わかります、なんて軽く言えない。
どうすればいいのか。
著者の小松さんは「寄り添えなさ」に向き合うこと、が大切ではないかと本書を通して考えます。
東北にも関東にも、東北随一の漁業の町にも観光地にもなりきれない。東日本大震災と原発事故後、傷ついたまちで放射能に恐怖し、風評被害は受けたが直接的被害は少なかった、福島県いわき市小名浜。
生まれ育ったこの街で、震災から10年後生きる「地元」の人々と話し、「地元」の人々を
書いたエッセイ集。
柳美里、三宅唱推薦。
装画の切り絵は坂内拓。
目次◉「震災10年」と名物女将が守るチーナン食堂/処理水放出と海辺のまちの生業/老舗温泉旅館に生まれた原子力災害考証館/楢葉ルーツの解体業者がつくる未完の映画館/若き作家と響き合う常磐炭鉱の念/「被災地」であり、「被災地」でなかった双葉高校で/復興工事の現場から手繰り寄せる線/「そこにいく」から始まることーアシスタントの〈イチエフ〉視察記/流転する記者と重ね合う〈ふるさと〉/博覧強記の先輩と見渡す複数ある世界/我が子と語り合う、10万年後のこと
小松理虔(こまつ・りけん)◉1979 年福島県いわき市小名浜まれ。法政大学文学部卒業後、福島テレビ報道部記者、かまぼこメーカー広報などを経て2015年独立。小名浜でオルタナティブスペース「UDOK.」を主宰しつつ様々な分野の企画や地域のプロジェクトに携わる。18年『新復興論』(ゲンロン)で大佛次郎賞受賞。著書に『地方を生きる』(ちくまプリマー新書)、『新地方論』(光文社新書)、『新復興論 増補版』(ゲンロン)。共著に『ただ、そこにいる人たち』(現代書館)、『常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム)(河出書房新社)、『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社)。
著:小松理虔 出版社:里山社 2025 ソフトカバー 256p
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