外で迷ったなら
どんなにか 楽だったか
自分の家の中にいて
それでもなお ロストするのに比べて
ただいまと言ってみる
けれどわたしがあるだけだ
あるいは家とはわたしだったのだ
だから言う いま
わたしへ帰った ただいま
(「おかえり」より)
向坂くじらの第二詩集。
2作続けて芥川賞にノミネートされているが、本人は詩人を公言しており、詩を軸にしていきたいようだ。
第一詩集「とても小さな理解のための」も普通ではなかったが今作も尋常ではない。
私が普段使っている言葉はこの詩集に収められた言葉の豊穣さを前にするとその貧しさに赤面するほどだ。
言葉の持つ無限の可能性を押し広げる傑作。
家、部屋、身体、生活、そしてそれらを写した細川葉子の写真から生まれた作品。
【著者略歴】
詩人。2022年埼玉県桶川市に「国語教室ことぱ舎」を設立し、小学生から高校生までを対象とした国語の指導を行う。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」でアーティストとしても活動。著書に詩集『とても小さな理解のための』(百万年書房)小説『いなくなくならなくならないで』(河出書房新社)エッセイ集『ことぱの観察』(NHK出版)『犬ではないと言われた犬』(百万年書房)、共著に『群れから逸れて生きるための自学自習法』(明石書店)など。1994年名古屋生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
著:向坂くじら 写真: 細川葉子 デザイン:川名潤 出版社:百万年書房 2025 ソフトカバー 194p
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