ああ鼓動が変えられてゆくこのことをだれかが音楽と呼んだのね
月うまれ月で育った女の子 笑うとすこし光ってみえた
重力がちがえば靴も異なって、おはようニューバランスのあかるさ
はじめての雪の遅さがいとおしい わたし ぜんぶが最初から好きだった
だいじなのは だったのはここにいることで 麻雀牌の鳥のまばたき
わたしはあなたの地球になりたい、ということわざがあるの。月には。
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第一歌集『花は泡、そこにいたって会いたいよ』、そして第二歌集『わたしの嫌いな桃源郷』がロングセラーを続ける初谷むいの第三歌集は9話の連作短歌による「物語歌集」。
月から地球へやってきた女の子の1年間の物語。
生活の中の小さなことにも生まれる驚きと喜びとつまずき、誰かが特別な「一人」になることのうれしさと苦しさ。
すべての感情がやさしく溶け合う魔法のような短歌211首を収録。
どんぴしゃのイラストは、「マムアンちゃん」でも知られるタイの漫画家、
タムくんことウィスット・ポンニミット。
著:初谷むい 出版社:ナナロク社 2025 ハードカバー 152p
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