若いころは、自分の旗を立てようと躍起になっていた。父が亡くなった四十九歳という年齢を基準に、限りある時間のなかで自分にはなにが出来るのだろうと焦っていた。なにが正解かさえわからないのに、早く答えに辿り着こうとしていた。だが、いくら探しても答えらしきものはなかった。
(「あとがきにかえて」より)
グラフィックデザイナー漆原悠一のエッセイ集。
漆原さんのデザインする本が好きだ。
作り手の想いをしっかりと汲み取り、手触りがよくて、読みやすい本を作る。
それは恐らく漆原さんが自然に身につけている優しさから生まれているのだろうと思っていたが、本書を読んで納得がいった。
死別した父のこと、家族のこと、学生時代のこと、友人のこと、そしてデザインという仕事のこと。
過去を振り返りながら今へ連なる日々を静謐な筆致で描く。
著者:漆原悠一 発行:tento 2025 ソフトカバー(天アンカット) 100p
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