ある人が苦しくつらい境遇に置かれ、自分が生きている意味を見出せずに苦しんでいたとして、その人が自分の不安や苛つきを、同じ境遇にある他人に対してぶつけることは許されるのか。
そうしたかたちで苦しみを紛らわそうとしたり、少しでも「無意味なんかじゃない自分」を感じようとしたりすることは、認められるのか。
そんな問いにくい問いを抱え、川端康成にその才能を認められながら、ハンセン病によって23歳でこの世を去った作家・北條民雄。
文学史に輝く傑作『いのちの初夜』を遺した若き小説家は、なぜ病を抱えてなお書き続けたのか。
そんな問いと伴走し、距離感を縮め、生身の作家を声を届けてくれるのは荒井裕樹さん(『生きていく絵』『障害者差別を問いなおす』『まとまらない言葉を生きる』)です。
【目次】
はじめに
第一章 差別の歴史を振り返る
第二章 差別の感覚を掘り起こす
第三章 北條民雄の生涯
第四章 隔離の中の北條民雄
第五章 差別される自分に戸惑う 「いのちの初夜」を読む(その一)
第六章 光の中の毒を読む 「いのちの初夜」を読む(その二)
第七章 無限ループを走り続ける 〈社会的人間〉とは
第八章 「作家」という生存戦略 北條民雄の日記を読む(その一)
第九章 言葉と心の落差 北條民雄の日記を読む(その二)
第一〇章 麗しく迷惑な友情 北條民雄の日記を読む(その三)
終章
終わりに
編:荒井裕樹 装丁:矢萩多聞 装画:ミロコマチコ 出版社:講談社 2025 初版 ソフトカバー 272p
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