僕たちが写真を見返す時、生きる切なさに包まれ、言い知れぬ郷愁の淵にひたるのは、
僕たちの存在を超えてしまった”消滅した時間”に出会うからだろう。
ー『奈良原一高写真集ー時空の鏡ー』より
米国滞在4年間の成果を凝縮し発表された名作『消滅した時間』が、新装版として復刊です。
1970年4月、3年間のヨーロッパ滞在後に奈良原が向かったのはアメリカでした。
アメリカの地にそれから4年間、写真家は暮らすことになります。
東部から西部までドライな感覚で巨大なアメリカ大陸と向き合い撮影を続け、帰国後に発表された『消滅した時間』は奈良原を現代写真家としての地位を不動のものにしました。
手付かずの大地と多文化社会を独自の視点で捉えた圧倒的傑作です。
特典「ポストカード」は有名なニューメキシコで撮影された宙に浮かぶ二つのゴミ缶の作品。
あとがき:「水のない海 奈良原一高」(1975.1)
解説: 「消滅した時間ー奈良原一高のアメリカ 蔦谷典子(島根県立美術館)」
英語/日本 English/Japanese
奈良原一高(IKKO NARAHARA)
1931年福岡生まれ。
1959年早稲田大学大学院(芸術学専攻)修士課程修了。
在学中の1956年に、初めての個展「人間の土地」が大きな反響を呼び、写真家としての活動を始める。
1959年、東松照明、細江英公、川田喜久治らとセルフ・エイジェンシィ「VIVO」を結成(1961解散)。その後、パリ(1962-1964)、ニューヨーク(1970-1974)と拠点を移しながら活動。1974年帰国後も世界各地を取材し、多数の展覧会を開催。写真集も数多く出版し、国際的にも高い評価を受ける。
主な個展に、「Ikko Narahara」ヨーロッパ写真美術館、パリ(2002-2003)、「時空の鏡:シンクロニシティー」東京都写真美術館(2004)、「手のなかの空 奈良原一高 1954-2004」島根県立美術館(2010)、「王国」東京国立近代美術館(2014-2015)など多数。
写真集に、『静止した時間』(1967)、『スペイン・偉大なる午後』(1969)、『ジャパネスク』(1970)、『消滅した時間』(1975)、『人間の土地』(1987)、『ヴェネツィアの夜』(1985)、『時空の鏡』(2004)、『太陽の肖像』(2016)など。主な受賞に、日本写真批評家協会新人賞(1958)、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞(1968)、日本写真協会年度賞(1986)、紫綬褒章(1996)、旭日小綬章受賞(2006)など。
著者 Author:奈良原一高 Ikko Narahara デザイン:佐野裕哉 出版社 publisher:復刊ドットコム 2025 初版 ハードカバー 242p
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