藤が人語を初めて話すときそれは垂れるように不完全だった
裁判に近いなにかを延々と水で薄めて飲んでいる冬
軽くなる体を風がすり抜ける晩夏の飛行機に空はドレス
めざめの春はねむりの夏へ いつからか自分が生きている気がしない
眼を伝うなみだを掬う下まつげ 震えるほど涼しい春の昼
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ナナロク社主催「第3回 あたらしい歌集選考会」より、歌人の木下龍也に選出された丸田洋渡(よっと)の第一歌集。
2017年から2025年までの作品から500首を収録。
既に俳人としても高く評価されており、まさに待望の歌集である。
木下さんのコメントがその証左だ。
「何度読んでも計り知れないし、計り知れないことがうれしい。
僕には到達し得ないであろう短歌の幅や奥深さをこれでもかと見せつけてくれたのが丸田さんだった。」
500首を収録する本体は長編小説並みの厚み、布製カバーに福田利之の装画が箔押し、上製丸背本という豪華仕様。
この装幀を手掛けたのは名久井直子。
著者・Author : 丸田洋渡 出版社 publisher:ナナロク社 2025 クロスハードカバー 512p
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