大気・海洋・土壌汚染、アレルギーの増加、免疫の不調、日常化する暴力、子どもの商品化、奪われる睡眠時間……。この世界の現実をどう捉えるか。
「環境」という言葉を使うとき、現実とのズレが大きくなっていることに気付いた藤原さん。著者は「環境」という言葉が「外界」というニュアンスを含み、「内界」にいる人間を含む生類を切り離して考えられることに違和感を感じる。「環境問題」は遠くから被害を眺める問題ではなく、それは差別と貧困の構造に根差し、人間の身体がまさに渦中の問題であるのに。
著者がここで着目したのはもれる、こぼれる、たかる「体液」です。
「人間」と「環境」を根源から定義し直す壮大な試み。
『分解の哲学』『農の原理の史的研究』『植物考』に続く混沌とする世界への問いです。
装幀：須山悠里
装画：エレナ・トゥタッチコワ
目次
はしがき
�機，錣困蕕�
体液をめぐる思考——生類の思想が編み直されるところ
慢性と急性——人文学的省察
「自己する」の不調——アレルギー時代の人文学的考察
�供，△修�
家庭科の哲学——「人間する」を遊ぶ
墨色と泥色の記憶——かこさとしの絵の淡い濁りについて
子どもの商品化に抗する思想
いま環境について考えるとはどういうことか
�掘，呂阿�む
農業技術への問い——ハイデガーの概念「はぐくむ hegen」について
土の思想をめぐる考察——脱農本主義的なエコロジーのために
さつまいもと帝国日本
賢治と道子をつなぐもの——「植物医師」と硫安
�検，燭戮�
培養肉についての考察
食の闇について
人間チューブ論——食のダイナミズムを考える
エディブル・プラネット
�后，泙犬�
「規則正しいレイプ」と地球の危機
表皮の脱領域的考察
もれる——膜が食い破られること
「たかり」の思想——食と性の分解論
あとがき
著者：藤原辰史 出版社：かたばみ書房 2025 ハードカバー 288p
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