”子どもの瞳は吸い込まれるように真っ黒で、いつも水に濡れた丸い石のようにしっとりと濡れていた。雨が降りだす前、やわらかい水気を含んだ風がおでこをなでたり、近所のおばあさんがしわくちゃの手で頬をなでるだけでも、ぽろぽろと澄んだ涙がこぼれ落ちた。”
いつも涙を流しているひとりの子どもと「涙を箱に集めている」おじさんの話。
二人はどこへ向かうのか。
大人のための童話として発表された短編ですが、そこはハン・ガン。
恐ろしく奥行きのある物語です。
装画と挿絵を担当したjunaidaの絵によって読み手は一層深いところまで誘われるでしょう。
著者:ハン・ガン 訳:きむ ふな 装画:junaida 出版社:評論社 2025 ソフトカバー 85p
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